なぜ自社制作なのか?外注との違いと向き不向き

WordPressを自社制作するか外注するかを比較検討するイメージ(管理画面とワークフロー)

Contents

多くの企業が情報発信の拠点としてWebサイトを運営する現代において、その基盤となるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の選択と構築方法は、事業の成否を左右する重要な経営判断です。特に、世界中で圧倒的なシェアを誇るWordPressは、その柔軟性と拡張性の高さから多くの企業に採用されています。しかし、その導入を「外注」に頼るか、「自社」で内製するかは、企業の目的や体制によって最適な選択が異なります。

本記事では、WordPressサイトを「自社で制作・運用する」という選択肢に焦点を当て、その実態を深く掘り下げます。外注との構造的な違いを明らかにし、自社制作ならではのメリット・デメリット、そして成功と失敗を分ける要因を、コンサルティングの視点から冷静に分析します。本稿が、単なる制作手法の比較に留まらず、貴社の事業成長に貢献するWebサイト運用のあり方を考える一助となれば幸いです。

1. 自社制作のメリット・デメリット(WordPress前提)

WordPress管理画面で更新を即時反映できる様子(自社運用のスピード感)

WordPressでのサイト構築を自社で行うという決断は、単にコストの問題だけでなく、事業運営の根幹に関わる多くの側面を持ちます。ここでは、そのメリットとデメリットを具体的に解説します。

自社制作のメリット

更新の即時性と柔軟性

自社制作の最大のメリットは、何と言ってもそのスピード感と柔軟性にあります。市場の変化や新たな施策の展開に合わせて、コンテンツの追加や修正、デザインの変更などを外部の業者を介さずに即座に実行できます。外注の場合、軽微な修正であっても、見積もり、発注、実装、確認というプロセスを経る必要があり、時間的なロスとコミュニケーションコストが発生します。機会損失を防ぎ、PDCAサイクルを高速で回せる点は、競争の激しい市場において大きなアドバンテージとなります。

社内ナレッジの蓄積とデータ活用

サイトの制作から運用までを内製化する過程で、Webサイトに関する技術的な知見や、コンテンツ運用のノウハウが社内に蓄積されます。アクセス解析のデータを直接分析し、ユーザーの行動に基づいた改善策を立案・実行することで、サイトは単なる情報発信ツールから、顧客理解を深めるための強力なマーケティングツールへと進化します。このナレッジは、将来的な事業展開や新たなWeb戦略を構築する上での貴重な資産となります。

中長期的なコスト構造の変化

初期構築には人材確保や学習コストがかかるものの、一度体制が整えば、中長期的には外注に比べて運用コストを抑制できる可能性があります。外注の場合、サイトの規模や更新頻度に比例して月々の保守費用や改修費用が増加し続けますが、自社運用であれば、人件費という固定費の範囲内で柔軟な対応が可能です。ただし、これはあくまで適切な体制が構築・維持されている場合に限ります。

自社制作のデメリット

初期構築における技術的ハードル

WordPressは比較的容易に始められるCMSですが、企業の公式サイトとして求められる品質、セキュリティ、拡張性を担保したサイトを構築するには、専門的な知識が不可欠です。HTML/CSS、PHP、データベース、サーバーインフラに関する一定の理解がなければ、テンプレートを少し改変しただけの、拡張性の低いサイトになってしまうリスクがあります。

セキュリティ・保守管理の責任

自社でサイトを保有するということは、そのセキュリティと安定稼働に関する全責任を自社で負うことを意味します。WordPress本体、テーマ、プラグインの脆弱性を狙ったサイバー攻撃は後を絶ちません。定期的なアップデート、堅牢なバックアップ体制の構築、不正アクセスの監視など、専門的な保守管理を怠れば、サイトの改ざんや情報漏洩といった深刻な事態を招く可能性があります。これらのリスク管理を自社で完結させるには、相応の技術力と体制が求められます。

人材の確保と教育コスト

最大の課題は「人」です。Webサイトの制作・運用に必要なスキルセットを持つ人材を確保し、継続的に教育していく必要があります。特に、デザイン、コーディング、サーバー管理、コンテンツマーケティングなど、複数の領域をカバーできる人材は市場価値が高く、採用は容易ではありません。また、特定の担当者に知識や業務が集中する「属人化」が進むと、その担当者の退職がサイト運用の停滞、ひいては事業の停滞に直結するリスクを常に抱えることになります。

2. 外注との本質的な違い(構造的な違い)

外注フローと自社フローの違いを示すワークフロー図(WordPress運用)

WordPressサイトの制作・運用において、自社制作と外注は単に「誰が作業するか」という表面的な違いに留まりません。そこには、事業の成果に直結する本質的かつ構造的な違いが存在します。この違いを理解することは、経営判断において極めて重要です。

利益構造の違い:制作会社の利益 vs 自社の事業成長

外注の場合、制作会社やフリーランスの主な収益源は、サイト制作や保守・運用にかかる費用です。彼らのビジネスモデルは、プロジェクトの受注数や作業工数に比例して利益を最大化することにあります。そのため、彼らの提案は、往々にして「最新技術の導入」や「デザイン性の追求」といった、制作物そのものの品質向上に焦点が当てられがちです。もちろん、これらは重要な要素ですが、必ずしも貴社の事業成長や売上向上に直結するとは限りません。

一方、自社制作・運用の目的は、あくまで自社の事業成長に貢献することです。Webサイトは、リード獲得、ブランディング、顧客サポート、採用活動など、事業戦略の達成のためのツールとして位置づけられます。この場合、サイトの更新頻度、コンテンツの質、ユーザー体験の改善、SEO対策といった運用面が重視され、これらが直接的に事業の成果に結びつくかを基準に投資判断がなされます。つまり、外注が「制作物の完成」をゴールとするのに対し、自社制作は「事業成果の創出」をゴールとする、という根本的な視点の違いがあります。

コミュニケーションコストと情報鮮度の差

外注に依頼する場合、要件定義、進捗確認、フィードバック、修正依頼など、多くのコミュニケーションが発生します。このプロセスには、時間的コストだけでなく、意図の齟齬や認識のズレによる手戻りといったリスクが常に伴います。特に、事業環境の変化が激しい現代において、外部とのコミュニケーションサイクルが長引くことは、情報鮮度の低下を招き、市場の機会を逸する可能性を高めます。

自社制作であれば、事業部門とWeb担当者が密接に連携し、リアルタイムで情報共有が可能です。市場の動向や顧客からのフィードバックを即座にサイトに反映させることができ、常に最新かつ最適な情報を提供できます。これにより、顧客とのエンゲージメントを高め、競争優位性を確立することが期待できます。

資産性の考え方(ソースコードと運用ノウハウ)

外注で制作されたWebサイトのソースコードやデザインデータは、契約内容によっては制作会社に著作権が帰属する場合があります。また、たとえ著作権が移譲されたとしても、そのサイトがどのように構築され、どのような運用ノウハウが必要なのかという情報は、制作会社内部に留まりがちです。結果として、サイトの改修や機能追加のたびに同じ制作会社に依頼せざるを得なくなり、ベンダーロックインの状態に陥るリスクがあります。

自社制作の場合、サイトに関する全ての情報(ソースコード、デザインデータ、サーバー構成、運用マニュアル、改善履歴など)が社内資産として蓄積されます。これは、将来的なサイトのリニューアルや機能拡張、あるいは新たなWebサービスの開発を行う際に、ゼロから始める必要がないという大きなメリットをもたらします。また、運用ノウハウが社内に蓄積されることで、担当者の異動や退職があった場合でも、スムーズな引き継ぎが可能となり、事業継続性の観点からも強固な基盤を築くことができます。

3. 失敗する企業の共通点

プラグインを増やし過ぎて管理が破綻するイメージ(WordPress運用の失敗)

WordPressを自社で制作・運用する企業の中には、期待通りの成果を出せず、最終的に運用が頓挫してしまうケースも少なくありません。そうした企業には、いくつかの共通点が見られます。これらの失敗パターンを事前に認識し、対策を講じることが成功への鍵となります。

「ツールを導入すれば解決する」という誤解

WordPressは強力なCMSですが、それ自体が魔法のツールではありません。「WordPressを導入すれば、自動的に集客できる」「簡単にWebサイトが作れる」といった誤解は、失敗の第一歩です。WordPressはあくまで「道具」であり、それを使いこなすための知識、スキル、そして運用体制が不可欠です。ツールの導入は目的ではなく、事業目標達成のための手段であることを明確に認識する必要があります。

運用フローを無視したデザイン重視の設計

Webサイトのデザインは重要ですが、自社運用を前提とする場合、デザイン性のみを追求し、運用フローや更新のしやすさを考慮しない設計は大きな問題を引き起こします。例えば、複雑なカスタムフィールドや独自のブロックエディタ設定を多用しすぎると、コンテンツ担当者が更新作業に手間取り、結果として更新頻度が低下する原因となります。また、デザインの変更や機能追加のたびに専門知識が必要となるような設計では、属人化を招き、柔軟な運用を妨げます。運用設計においては、コンテンツの更新頻度、担当者のスキルレベル、将来的な拡張性などを総合的に考慮し、シンプルかつ効率的な管理画面の構築を優先すべきです。

責任の所在が不明確な「丸投げ」体質

自社制作・運用と謳いながらも、実際には特定の担当者や部署に全ての責任を「丸投げ」し、経営層や他部署がWebサイト運用に関心を示さないケースも失敗の典型です。Webサイトは企業の顔であり、事業戦略と密接に連携すべきものです。しかし、責任の所在が不明確なままでは、目標設定が曖昧になり、必要なリソースが確保されず、問題発生時の対応も遅れがちになります。Webサイト運用は、全社的な取り組みとして位置づけ、経営層がその重要性を理解し、適切なリソース配分と責任体制を構築することが不可欠です。

短期的な成果を求めすぎる傾向

Webサイト運用、特にコンテンツマーケティングやSEOは、短期的な成果が出にくい性質を持っています。しかし、多くの企業は、投資対効果を早期に求めすぎるあまり、十分な期間を待たずに運用方針を頻繁に変更したり、リソースを削減したりしてしまいます。結果として、一貫性のない運用となり、本来得られるはずの成果を逃してしまうことになります。Webサイト運用は中長期的な視点に立ち、継続的な改善と投資が必要であることを理解し、忍耐強く取り組む姿勢が求められます。

4. 社内体制の作り方(担当者1人では回らない理由)

WordPress運用に必要な役割分担(ディレクション・コンテンツ・技術管理)

WordPressの自社制作・運用を成功させるためには、適切な社内体制の構築が不可欠です。一人の担当者に全ての業務を集中させることは、短期的な解決策に見えても、中長期的には多くのリスクを抱えることになります。ここでは、なぜ担当者一人では運用が回らないのか、そしてどのような体制を構築すべきかを解説します。

担当者1人のリスク:属人化とブラックボックス化

Webサイトの制作・運用は多岐にわたる専門知識を要求します。デザイン、コーディング、サーバー管理、セキュリティ対策、コンテンツ企画、SEO、アクセス解析など、これら全てを一人の担当者が完璧にこなすことは現実的ではありません。仮に一人の優秀な担当者が全てを担えたとしても、その知識やノウハウが社内で共有されず、その担当者が不在になった場合、サイト運用が完全に停止する「属人化」のリスクが極めて高まります。また、業務プロセスがブラックボックス化することで、問題発生時の原因究明や改善が困難になり、事業継続性にも悪影響を及ぼします。

必要な役割分担:ディレクション、コンテンツ、技術管理

属人化を避け、持続可能な運用体制を構築するためには、役割の明確化と分担が重要です。最低限、以下の3つの役割を社内で担うことを推奨します。

1. Webディレクション

Webサイト全体の戦略立案、目標設定、KPI管理、コンテンツ企画の統括、進捗管理、外部ベンダーとの連携など、Webサイト運用全体の司令塔となる役割です。事業目標とWebサイトの目標を整合させ、各担当者の業務が円滑に進むよう調整します。経営層との連携も密に行い、必要なリソースの確保や意思決定をサポートします。

2. コンテンツ制作・運用

記事コンテンツの企画・執筆、画像・動画素材の準備、WordPressへの入稿、SEO対策、SNS連携、アクセス解析に基づくコンテンツ改善などを担当します。ユーザーにとって価値のある情報を提供し、サイトの魅力を高めることが主なミッションです。ライティングスキルだけでなく、ターゲットユーザーのニーズを理解し、データに基づいてコンテンツを改善していくマーケティング視点も求められます。

3. 技術管理・保守

WordPress本体、テーマ、プラグインのアップデート、サーバー・データベースの管理、セキュリティ対策(バックアップ、脆弱性診断、不正アクセス監視)、表示速度の最適化、エラー対応など、Webサイトの技術的な健全性を維持する役割です。専門的な知識が要求されるため、必要に応じて外部の技術サポートやホスティングサービスと連携することも視野に入れます。この役割が安定していることが、サイトの信頼性と事業継続性の基盤となります。

これらの役割を必ずしも専任の担当者で賄う必要はありません。例えば、Webディレクションはマーケティング部門の責任者が兼任し、コンテンツ制作は各事業部の担当者が協力して行う、技術管理は情報システム部門が担当するといった柔軟な体制も考えられます。重要なのは、それぞれの役割と責任範囲を明確にし、複数の人間が関与することで、知識やノウハウを共有し、相互にカバーできる体制を築くことです。

属人化を避けるためのマニュアル化とドキュメント管理

役割分担と並行して、業務の「マニュアル化」と「ドキュメント管理」を徹底することが、属人化を避ける上で極めて重要です。WordPressの操作方法、コンテンツ入稿フロー、画像レギュレーション、SEOの基本ルール、バックアップ手順、トラブルシューティングなど、あらゆる業務プロセスを文書化し、社内で共有可能な状態にしておくべきです。

これにより、新しい担当者が加わった際のオンボーディングがスムーズになるだけでなく、既存の担当者が不在の場合でも、他のメンバーが業務を代行できるようになります。また、ドキュメントは常に最新の状態に保ち、定期的に見直しを行うことで、運用プロセスの改善にも繋がります。Wikiや社内共有ドライブなどを活用し、誰もがアクセスしやすい環境を整備することが望ましいでしょう。

5. KPIの設定方法(運用を前提とした現実的な指標)

WordPress運用の計測画面イメージ(KPIダッシュボードと改善サイクル)

WordPressサイトを自社で運用する上で、その効果を測定し、改善サイクルを回すためには、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設定が不可欠です。単にアクセス数を追うだけでなく、事業目標に直結する現実的な指標を設定することが、運用を成功に導く鍵となります。

コンテンツ量産ではなく「質の維持」と「コンバージョン」

多くの企業が陥りがちなのが、コンテンツの「量」をKPIとして設定してしまうことです。しかし、重要なのはコンテンツの量ではなく、その「質」と、それが事業目標にどれだけ貢献しているかです。例えば、ブログ記事の公開数をKPIとするのではなく、以下のような指標に注目すべきです。

•コンバージョン率(CVR): 問い合わせ、資料ダウンロード、商品購入など、サイト訪問者が目的とする行動を完了した割合。最も事業成果に直結する指標です。

•リード獲得数: フォーム送信、メルマガ登録など、見込み顧客の情報を獲得できた数。特にBtoBビジネスにおいては重要な指標となります。

•エンゲージメント率: サイト滞在時間、ページビュー数、直帰率など、ユーザーがコンテンツにどれだけ深く関与したかを示す指標。質の高いコンテンツはエンゲージメントを高めます。

•主要キーワードでの検索順位: SEO対策の成果を測る指標。上位表示されることで、オーガニック検索からの流入増加に繋がります。

これらの指標は、単にサイトのパフォーマンスを示すだけでなく、コンテンツの質やユーザー体験の改善点を示唆するものです。量産よりも、既存コンテンツの質を高め、コンバージョンに繋がる導線を最適化することに注力すべきです。

運用負荷を考慮した実行可能な指標

KPIを設定する際には、自社の運用体制とリソースを考慮し、現実的に測定・改善が可能な指標を選ぶことが重要です。あまりにも多くのKPIを設定したり、測定が困難な指標を選んだりすると、運用担当者の負担が増大し、形骸化するリスクがあります。例えば、以下のような観点からKPIを絞り込むことを推奨します。

•測定の容易さ: Google Analyticsなどのツールで容易に測定できるか。

•改善施策との連動性: そのKPIが改善することで、どのような施策に繋がるか明確か。

•担当者の理解度: 担当者がそのKPIの重要性を理解し、自らの業務と結びつけられるか。

最初は少数の重要なKPIに絞り込み、運用体制が成熟するにつれて、必要に応じて指標を追加していくアプローチが現実的です。例えば、初期段階では「月間リード獲得数」と「主要ページのCVR」に集中し、その後「新規ユーザー獲得コスト」や「顧客単価」といったより詳細な指標に広げていくなどが考えられます。

技術的な健全性(表示速度、セキュリティ、エラー率)

Webサイトの運用において、目に見える成果指標だけでなく、その基盤となる技術的な健全性もKPIとして設定すべきです。表示速度の遅延やセキュリティの脆弱性は、ユーザー体験を損ない、SEO評価にも悪影響を与え、最終的には事業成果に悪影響を及ぼします。以下の指標を定期的に監視し、改善に努めることが重要です。

•ページ表示速度(LCP, FID, CLSなどCore Web Vitals): Googleが提唱するユーザー体験の指標。Google Search ConsoleやPageSpeed Insightsで測定可能です。

•サイトの稼働率: サーバーダウンやシステムエラーによるサイトの停止時間。監視ツールを導入し、異常を早期に検知できる体制を構築します。

•セキュリティ脆弱性スコア: 定期的な脆弱性診断によるスコア。WordPress本体、テーマ、プラグインのバージョン管理を徹底し、常に最新の状態を保つことが重要です。

•エラー率(404エラー、JavaScriptエラーなど): Google Search Consoleなどで確認できるエラーの発生率。ユーザーの離脱やSEO評価の低下に繋がるため、定期的なチェックと修正が必要です。

これらの技術的なKPIは、直接的な売上には繋がりにくいものの、安定したサイト運用と長期的な事業成長を支える上で不可欠な基盤となります。運用担当者だけでなく、技術管理担当者とも連携し、定期的なレポートと改善計画を策定することが求められます。

6. 運用設計を重視した設計思想

WordPressを自社で制作・運用する上で、最も重要なのは「運用設計」です。一度作って終わりではなく、継続的に更新され、改善されていくことを前提とした設計思想が求められます。ここでは、更新が滞らず、属人化を避け、安定した運用を可能にするための設計思想について解説します。

更新が止まらないための管理画面カスタマイズ

WordPressの標準的な管理画面は汎用性が高い一方で、特定の業務フローに最適化されているわけではありません。コンテンツ担当者が迷わず、効率的に作業を進められるよう、管理画面のカスタマイズは必須です。具体的には、以下のようなカスタマイズが考えられます。

•カスタム投稿タイプとカスタムフィールドの活用: 記事、事例、お知らせなど、コンテンツの種類に応じて入力項目を最適化することで、担当者は必要な情報を漏れなく、かつ正確に入力できます。これにより、コンテンツの品質が均一化され、運用効率が向上します。

•不要なメニューの非表示化: 担当者にとって不要なメニュー項目を非表示にすることで、管理画面をシンプルにし、誤操作のリスクを減らします。

•ユーザー権限の最適化: 各担当者の役割に応じて、WordPressのユーザー権限を適切に設定します。例えば、コンテンツ担当者には記事の編集・公開権限のみを与え、テーマやプラグインの設定変更権限は与えないことで、セキュリティリスクを低減し、システム全体の安定性を保ちます。

•マニュアルへの導線設置: 管理画面内に、コンテンツ作成ガイドラインやトラブルシューティングマニュアルへのリンクを設置することで、担当者が困った際にすぐに情報を参照できる環境を整えます。

これらのカスタマイズは、単に使いやすさを向上させるだけでなく、運用ルールをシステムレベルで担保し、属人化を防ぐ上で極めて有効です。

プラグイン選定の基準と依存リスクの管理

WordPressの大きな魅力の一つは、豊富なプラグインによる機能拡張性です。しかし、無計画なプラグインの導入は、サイトの表示速度低下、セキュリティリスクの増大、将来的なメンテナンスコストの増加を招きます。プラグイン選定においては、以下の基準を設けるべきです。

•必要最低限の機能に絞る: 本当に必要な機能か、代替手段はないかを検討し、安易なプラグイン導入は避けます。

•信頼性と更新頻度: 開発元が信頼できるか、定期的に更新されているか(最終更新日、WordPressの対応バージョン、レビュー数、評価などを確認)。更新が停止しているプラグインは、セキュリティリスクが高まります。

•他のプラグインとの競合: 既存のプラグインやテーマとの相性を確認し、競合による不具合が発生しないか検証します。

•パフォーマンスへの影響: プラグイン導入後のサイト表示速度への影響をテストします。

また、特定のプラグインに過度に依存することは、そのプラグインの開発停止や有料化、脆弱性発覚といった事態が発生した際に、サイト運用に大きな影響を与えるリスクがあります。重要な機能については、可能な限り自社でコードを管理するか、複数の代替案を検討しておくなど、依存リスクを管理する視点も必要です。

データのバックアップと有事の際の復旧体制

Webサイトのデータは企業の重要な資産です。サーバー障害、サイバー攻撃、誤操作など、予期せぬ事態に備え、堅牢なバックアップ体制を構築することは運用設計の根幹をなします。バックアップは、WordPressのファイル(テーマ、プラグイン、アップロードファイルなど)とデータベースの両方について、定期的に自動で取得されるように設定すべきです。

•バックアップ頻度: コンテンツの更新頻度に合わせて、日次、週次などの適切な頻度を設定します。

•バックアップデータの保存場所: サーバーとは別の安全な場所(クラウドストレージなど)に保存し、複数の世代を保持します。

•復旧テスト: 定期的にバックアップデータからの復旧テストを実施し、有事の際に確実に復旧できることを確認します。

また、実際にトラブルが発生した際の「復旧手順書」を作成し、社内で共有しておくことも重要です。誰が、いつ、どのような手順で復旧作業を行うのかを明確にしておくことで、緊急時にも冷静かつ迅速に対応できます。これは、事業継続計画(BCP)の一環としても位置づけられます。

結びに:自社制作を選択すべき判断基準

WordPressの自社制作・運用は、単なるコスト削減策ではなく、企業のWeb戦略を内製化し、事業成長を加速させるための戦略的な選択です。しかし、それは同時に、技術的な責任、人材育成、運用体制の構築といった多大なコミットメントを要求します。

本記事で解説したメリット・デメリット、失敗する企業の共通点、そして成功のための体制構築とKPI設定の考え方を踏まえ、貴社が自社制作を選択すべきか否かを判断する際の基準は以下の通りです。

•Webサイトが事業の中核をなす、あるいは今後中核となる計画があるか?

•Webサイトの更新頻度が高く、市場の変化に即応する必要があるか?

•Webサイト運用を通じて、社内にナレッジを蓄積し、マーケティング力を強化したいか?

•中長期的な視点で、Webサイトへの投資を「コスト」ではなく「資産」と捉えられるか?

•Webサイト運用に必要な人材を確保・育成し、継続的に投資する覚悟があるか?

これらの問いに対し、明確に「はい」と答えられる企業にとって、WordPressの自社制作・運用は、事業成長の強力なエンジンとなり得ます。一方で、これらのコミットメントが難しい場合は、信頼できる外部パートナーとの連携を模索することも賢明な選択です。重要なのは、自社の状況と目標を冷静に分析し、最適なWeb戦略を構築することです。

自社制作チェックリスト(無料PDF)

WordPressを自社で制作・運用する体制が整っているかを確認できる

「自社制作チェックリスト」を無料で配布しています。

また、WordPress運用設計について詳しく知りたい方は

以下も参考にしてください。

/wordpress/

Share the Post:

Related Posts