Webサイトに「お客様の声」や「導入事例」「実績紹介」のページを用意している企業は少なくありません。
これまでの実績を掲載することは、自社の経験や対応力を伝えるうえで有効です。
ただし、事例を何件も並べるだけでは、必ずしも問い合わせや相談につながるとは限りません。
重要なのは、事例やお客様の声を「実績を見せるためのページ」としてではなく、サービスを検討している人が「ここなら相談できそう」と判断するための材料として活用することです。
特に中小企業のWebサイトでは、知名度だけで信頼を得ることが難しいケースもあります。そのため、実際の利用者や対応事例を通じて、サービスの内容や対応イメージを具体的に伝えることが大切です。
今回は、お客様の声・事例・実績ページそれぞれの役割を整理しながら、サービスページや問い合わせ導線と組み合わせて信頼につなげる考え方を解説します。
「実績」「事例」「お客様の声」は役割が少し違う

似たように扱われることの多い「実績」「事例」「お客様の声」ですが、それぞれ伝えられる情報は少し異なります。
まずは役割を整理しておくと、Webサイト内での使い分けがしやすくなります。
実績は「経験があること」を伝える
実績ページでは、これまでにどのような仕事をしてきたのかを伝えます。
たとえばWeb制作会社であれば制作したWebサイト、不動産会社であれば売却や管理の対応実績、設備会社であれば施工やメンテナンスの対応例などが該当します。
実績を見ることで、利用者は「この会社は実際にこの仕事をしているのか」「自分と似た依頼にも対応した経験があるのか」を確認できます。
つまり、実績は会社の経験や対応範囲を示す材料です。
事例は「どのように対応したか」を伝える
事例では、単に成果物を見せるだけでなく、その背景や対応内容まで説明します。
たとえば、
「どのような課題があったのか」
「どのような提案や対応を行ったのか」
「結果として何が変わったのか」
といった流れを伝えることで、実際にサービスを利用した場合のイメージを持ってもらいやすくなります。
利用者にとって重要なのは、完成したものだけではありません。
「相談したらどのように進めてもらえるのか」という過程も、依頼先を選ぶ判断材料になります。
お客様の声は「利用した人の評価」を伝える
お客様の声は、企業側ではなく利用者側から見た評価を伝えるコンテンツです。
サービス内容を企業自身が説明するのとは違い、実際に利用した人がどう感じたのかを知ることができます。
「説明が分かりやすかった」
「相談しやすかった」
「対応が早かった」
「依頼前に感じていた不安が解消された」
といった内容は、サービスページだけでは伝えにくい部分です。
そのため、お客様の声は会社の雰囲気や対応品質を補足する役割があります。
事例ページは「自社をアピールする場所」だけではない
事例ページを作るとき、つい「こんなに多くの実績があります」「このような成果が出ました」と、自社をアピールする内容に偏りがちです。
もちろん、自社の実績を伝えることは必要です。
しかし、検討中の利用者が知りたいのは、「この会社がすごいか」だけではありません。
むしろ、
「自分の状況にも対応してもらえるか」
「同じような悩みを持っていた人はいないか」
「どのような相談から始まったのか」
といった点を確認しています。
そのため、事例は会社目線ではなく、利用者が自分自身と重ね合わせられるように見せることが大切です。
「自分と似たケース」を見つけられる事例が安心につながる
事例ページの大きな役割のひとつが、「自分と似たケースがある」と感じてもらうことです。
たとえばWebサイト制作を検討している企業であれば、
「古いWebサイトをリニューアルした事例」
「更新できないサイトをWordPress化した事例」
「問い合わせを増やすためにサービスページを改善した事例」
など、課題ごとに事例が整理されていれば、自分の状況に近い内容を探しやすくなります。
不動産会社であれば、
「相続した空き家を売却した事例」
「住み替えに合わせて売却した事例」
「遠方にある物件の管理を依頼した事例」
といった分け方も考えられます。
このように、業種や商品名だけではなく、「どのような悩みがあったのか」という視点で事例を整理すると、検討中の人にとって役立つ情報になります。
事例は「課題→対応→結果」の流れで見せる

成果物の写真や概要だけを掲載している実績ページもあります。
しかし、信頼につなげるためには、もう少し背景を伝えることが重要です。
基本的には、
課題 → 対応 → 結果
という流れを意識すると分かりやすくなります。
課題
まず、依頼前にどのような困りごとがあったのかを伝えます。
たとえば、
「Webサイトはあるものの問い合わせが少なかった」
「更新方法が分からず情報が古いままになっていた」
「複数のサービスがあり、サイト上で違いが伝わりにくかった」
といった内容です。
ここで読者が「自分も同じことで困っている」と感じられると、事例の続きを読んでもらいやすくなります。
対応
次に、その課題に対してどのような対応を行ったのかを説明します。
専門用語を並べるのではなく、利用者にとって分かりやすい説明を意識します。
たとえば、
「サービス内容ごとにページを整理した」
「問い合わせフォームまでの導線を見直した」
「自社で更新できる仕組みに変更した」
といった内容です。
ここでは、会社の考え方や仕事の進め方も自然に伝わります。
結果
最後に、対応後にどのような変化があったのかを伝えます。
数字で確認できる成果がある場合は、正確な範囲で掲載すると分かりやすくなります。
ただし、すべての事例で数値を掲載できるとは限りません。
その場合でも、
「更新作業を社内で行えるようになった」
「サービスごとの内容が整理された」
「問い合わせ時の説明がしやすくなった」
など、実際に確認できた変化を伝えることができます。
成果を大きく見せることよりも、事実を具体的に伝えることが重要です。
お客様の声は「褒め言葉」だけにしない

お客様の声を掲載するとき、良い評価だけを短く並べるケースがあります。
「とても良かったです」
「丁寧に対応してもらいました」
「またお願いしたいです」
もちろん、こうした声も意味があります。
ただし、それだけでは検討中の人にとって十分な判断材料にならない場合があります。
より役立つのは、「依頼前にどのような不安があり、利用してどう感じたのか」が分かる声です。
たとえば、
「最初は何を相談すればよいか分かりませんでしたが、必要な内容を整理してもらえたので進めやすかった」
といった声であれば、「知識がなくても相談できる」という安心材料になります。
また、
「複数社に相談しましたが、説明が分かりやすかったことが依頼の決め手になりました」
という内容であれば、比較検討中の人にとって参考になります。
お客様の声は、単なる評価ではなく、「利用前と利用後の変化」が分かる内容にすると活用しやすくなります。
事例の数よりも「伝わりやすさ」を優先する
実績が増えてくると、できるだけ多く掲載したくなるものです。
しかし、何十件もの事例を同じ形式で並べるだけでは、利用者が自分に必要な情報を探しにくくなります。
掲載件数が多い場合は、カテゴリ分けを検討しましょう。
たとえば、
- サービス別
- 業種別
- 課題別
- 地域別
などに分ける方法があります。
Web制作会社であれば、「コーポレートサイト」「採用サイト」「ECサイト」といった分類だけでなく、「問い合わせ改善」「リニューアル」「更新性改善」といった課題別の分類も考えられます。
重要なのは、企業側が管理しやすい分類ではなく、利用者が自分に近い事例を探しやすい分類にすることです。
実名や写真を掲載できない場合でも事例は作れる
中小企業のWebサイトでは、「顧客名を出せないため事例を掲載できない」というケースもあります。
しかし、実名を掲載できなければ事例ページを作れないわけではありません。
顧客の許可や契約上の条件を確認したうえで、
「千葉県・製造業・従業員30名」
「東京都・不動産会社」
「地域密着型のサービス業」
といった形で情報を限定して紹介する方法もあります。
もちろん、掲載内容から顧客を特定できてしまう場合や、守秘義務のある情報については注意が必要です。
公開できる範囲の中で、
「どのような課題だったのか」
「何を行ったのか」
「どのような変化があったのか」
を伝えるだけでも、検討者にとって役立つ事例になります。
サービスページの中にも事例を掲載する

事例は、独立した「導入事例ページ」だけに置く必要はありません。
むしろ、サービスページの中に関連事例を掲載すると効果的です。
たとえばWebサイトリニューアルのサービスページを見ている人には、リニューアル事例を掲載します。
採用支援のページであれば、採用サイトや求人改善に関する事例を掲載します。
サービス内容を読んだ直後に、
「実際にはこのような企業が利用しています」
「このような課題に対応しています」
という具体例を見ることで、サービスへの理解を深めることができます。
すべてを載せず、代表的な事例を選ぶ
サービスページに事例を掲載するときは、事例ページの内容をすべて転載する必要はありません。
サービスに関連する代表的な事例を2〜3件紹介し、「その他の事例を見る」と事例一覧へ誘導する方法があります。
これならサービスページが長くなりすぎず、詳しく知りたい人だけが事例ページへ進めます。
CTAの前に事例を置くと「問い合わせる理由」を補強できる

CTAとは、問い合わせや資料請求など、利用者に次の行動を促すための要素です。
サービスページの最後に「お問い合わせはこちら」というボタンを置いていても、その直前に判断材料が不足していると、すぐにはクリックしてもらえない場合があります。
そこで、CTAの前に事例やお客様の声を配置する方法があります。
たとえば、
サービスの特徴
↓
料金や対応内容
↓
利用の流れ
↓
事例・お客様の声
↓
問い合わせ
という流れです。
サービス説明を読んだ後に、実際の利用例や利用者の評価を確認できれば、「自分も相談してみよう」と判断しやすくなります。
事例やお客様の声は、CTAそのものではありません。
しかし、CTAを押す前の不安を減らし、判断を後押しする役割があります。
CTAは事例の内容に合わせて変える
事例ページの最後に必ず同じ問い合わせボタンを置く必要はありません。
事例の内容によって、次に案内するページを変えることもできます。
たとえばWebサイト改善の事例であれば、
「Webサイト改善について相談する」
という問い合わせにつなげてもよいでしょう。
サービス内容をもう少し確認したい人向けには、
「Webサイト改善サービスを見る」
とサービスページへ戻す方法もあります。
まだ問い合わせる段階ではない人もいるため、事例から直接問い合わせだけを求めるのではなく、検討段階に合わせた選択肢を用意すると自然です。
古い事例や情報は定期的に確認する
事例ページは一度作ると、そのまま長期間更新されないことがあります。
しかし、サービス内容や料金、対応方法が変わっている場合、古い事例が現在のサービス内容と合わなくなる可能性があります。
特に、
「現在は提供していないサービス」
「現在とは異なる料金体系」
「古い画面やデザイン」
「現在は使用していない仕組み」
などが掲載されている場合は注意が必要です。
古い事例そのものを削除する必要はありませんが、「掲載当時の内容」であることが分かるようにしたり、現在のサービスページへ誘導したりするなどの対応を検討しましょう。
事例ページもサービスページやFAQと同じように、定期的な見直しが必要なコンテンツです。
まとめ:事例やお客様の声を「検討を助ける情報」として使う
お客様の声や事例、実績は、自社の経験をアピールするためだけのコンテンツではありません。
検討中の利用者に、
「自分と同じようなケースにも対応している」
「相談するとこのように進む」
「実際に利用した人もいる」
と理解してもらうための判断材料です。
実績では経験を伝え、事例では対応の過程を伝え、お客様の声では利用者側から見た評価を伝える。
それぞれの役割を意識して使い分けると、Webサイト全体の信頼性を補強できます。
また、事例ページだけを充実させるのではなく、関連するサービスページの途中やCTAの前に代表事例を配置することも重要です。
自社のWebサイトを見直す際には、「事例が何件掲載されているか」ではなく、「この事例を見た人が自分の状況と重ね合わせられるか」という視点で確認してみてください。
事例やお客様の声が適切に配置されていれば、サービス説明だけでは伝えきれない安心感を補い、問い合わせや相談へ進むための判断材料として活用できます。

