プロのWebディレクターが教える！公開前チェック50項目：リンク・計測・法対応・AI検索対策

サイト公開前の“ヒューマンエラー”への共感

Webサイトの公開直前は、誰もが経験する戦場のようなものです。デザインの最終調整、コンテンツの流し込み、そして迫りくる納期。この緊迫した状況下で、プロのディレクターやWeb担当者であっても、「まさか」という見落とし、つまりヒューマンエラーが発生しがちです。

特に、目に見えにくい「計測設定」「法的な要件」「未来の検索対策」といった項目は、公開後に発覚すると大きな機会損失や信頼の失墜につながります。

本記事では、中小企業や制作会社の皆様が、サイト公開前に必ず確認すべき「技術的チェック」「法的チェック」「AI検索時代の最終確認ポイント」を、50項目のチェックリストという視点から整理し、公開後の「後悔」を未然に防ぐための実務的な知見を提供します。

セクション1：リンク・計測の技術チェック

公開後の改善活動の成否は、正確な計測にかかっています。GA4（Google Analytics 4）、GTM（Google Tag Manager）、Search Consoleの連携は、単にタグを埋め込むだけでなく、「正しく機能しているか」の検証が不可欠です。

チェック項目（抜粋）	目的
GA4タグの全ページ設置確認	ユーザー行動の網羅的な把握
GTMのデバッグモードでの発火テスト	イベント計測の正確性担保
Search ConsoleとGA4の連携確認	検索流入キーワードとサイト内行動の紐付け
404エラーページの動作確認	ユーザー体験の維持とSEO評価の保護
外部リンクの動作確認（ターゲットブランク設定含む）	離脱率の抑制とユーザビリティ向上
robots.txtとsitemap.xmlの確認とSearch Consoleへの登録	クロールの効率化とインデックス促進
正規化（Canonical）タグの設置確認	コンテンツの重複評価回避

特に、GA4とSearch Consoleの連携は、ユーザーが「どの検索キーワードで流入し、サイト内でどのような行動をとったか」という一連の流れを把握するために極めて重要です。連携が完了したら、必ずGA4レポート内でデータが反映されていることを確認しましょう。また、GTMを使用している場合は、データレイヤーが正しく実装され、必要な情報（ユーザーID、商品情報など）が取得できているかも重要なチェックポイントです。この「見えない部分」の正確性が、後のデータ分析の質を決定づけます。

セクション2：法対応の必須項目

Webサイトは、公開した瞬間から法律の適用を受けます。特に、ユーザーの信頼と直結する「特商法」「プライバシーポリシー」「クッキーバナー」の3点は、公開前の最優先チェック項目です。

特商法（特定商取引に関する法律）に基づく表記は、ECサイトや有料サービスを提供するサイトだけでなく、問い合わせフォームを通じて契約や取引が発生する可能性のある全ての事業者が対象となり得ます。表記漏れは行政指導の対象です。

また、プライバシーポリシーは、GA4などの計測ツールで取得するデータを含む、個人情報の取り扱い方針を明記するものです。そして、GDPRや改正電気通信事業法などの影響を受け、クッキーバナー（Cookie同意管理システム）の導入と、ユーザーが同意を撤回できる仕組みの設置が、もはや必須となっています。これらの法的要件に関するページ（特商法、プライバシーポリシー）は、フッターなどユーザーが容易にアクセスできる場所にリンクを設置し、公開前に最終責任者が内容を精査することが、信頼とコンプライアンスの観点から極めて重要です。

セクション3：構造化データと代替テキストでAI検索時代に備える

従来のSEO（検索エンジン最適化）に加え、今後はLLM（大規模言語モデル）が生成する回答にサイト情報が利用されるLLMO（Large Language Model Optimization）の視点が不可欠です。LLMOとは、生成AIがWebサイトの情報を正確に理解し、その回答の根拠として採用してもらうための最適化戦略です。

AIがコンテンツを正確に理解し、信頼できる情報源として採用してもらうためには、以下の2点が鍵となります。

1.構造化データ（Schema.org）の導入: 記事、FAQ、商品情報などを機械が理解しやすい形式でマークアップすることで、AIがコンテンツの意図を正確に把握しやすくなります。

2.代替テキスト（Alt Text）の最適化: 画像の内容を正確に記述した代替テキストは、視覚情報が読み取れないAIや、アクセシビリティを必要とするユーザーにとって極めて重要です。これにより、AIは画像の内容をテキスト情報として認識し、検索結果や生成AIの回答に反映させることができます。

LLMOの具体的な対策については、関連記事「LLMOとは」もご参照ください。

セクション4：チェックリストで防ぐ「公開後の後悔」

公開後のトラブルの多くは、この50項目のような網羅的なチェックリストを「使わなかった」ことに起因します。特に、以下の項目は「公開後に修正が難しい」ため、入念な確認が必要です。

カテゴリ	主なチェック項目
技術	SSL証明書の有効性、レスポンシブデザインの崩れ、全ブラウザでの表示確認、フォームの送信テスト（サンクスページ到達確認）
コンテンツ	誤字脱字、リンク切れ、画像や動画の読み込み速度、ファビコンの表示確認、OGP設定（SNSシェア時の表示確認）
法務・信頼	特商法表記、プライバシーポリシー、著作権表示、お問い合わせ先の電話番号・メールアドレスの動作確認
AI検索	構造化データの検証、主要画像の代替テキスト設定、コアウェブバイタル（LCP/FID/CLS）の事前計測

このチェックリストを、制作チームとクライアント双方で共有し、「誰が」「いつ」「何を」確認したかを記録に残すことが、公開後の後悔を防ぐ最良の策です。