Webサイト制作の発注で失敗しないために:RFP(提案依頼書)の作り方と必須10項目

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Webサイトのリニューアルや新規構築を検討する際、制作会社への発注直前で立ち止まってしまう方は少なくありません。特に、初めてRFP(Request for Proposal:提案依頼書)を作成する担当者にとって、「何をどこまで書けばいいのか」「専門的な要件をどう伝えればいいのか」といった不安は、発注の大きな壁となりがちです。

本記事は、まさにその発注直前の不安を解消し、スムーズかつ成功に導くためのRFP作成を支援します。RFPの基本的な目的から、Webサイト制作において必ず盛り込むべき10の必須項目、そしてBowlinesが専門とする最新の非機能要件までを、すべて公的な一次情報・公式情報を出典として解説します。

このガイドを読み終える頃には、貴社が抱える課題を正確に伝え、最適なパートナーを選定するためのRFPが、明確な形で見えてくるはずです。

1. RFPの目的とは

RFPの正式名称と意味

RFPとは、Request for Proposalの略称であり、日本語では「提案依頼書」と訳されます。これは、発注者が情報システムやWebサイトの開発・構築を外部の事業者に依頼する際、プロジェクトの目的、要件、制約条件などを明記し、それに基づいた具体的な提案(解決策、実施方法、費用、納期など)を提出してもらうために作成する文書です。

RFPの策定は、情報システム開発における発注者と受注者の間の取引を健全化し、信頼性を向上させるための重要なプロセスとして、経済産業省のガイドラインでもその重要性が示されています 1。

出典: 経済産業省「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」報告書、モデル取引・契約書等 1

RFPが制作会社・発注者の双方にもたらすメリット

RFPは、発注者と制作会社(受注者)の双方に明確なメリットをもたらします。

対象メリット
発注者1. 要件の明確化: 社内の関係者間でプロジェクトの目的やスコープを整理し、共通認識を持つことができる。2. 公平な比較: 複数の提案を同一の基準で比較検討でき、客観的かつ公平な選定が可能になる。3. 発注後のトラブル防止: 契約前に要件や期待値を明確にすることで、認識の齟齬による手戻りや紛争を未然に防ぐ。
制作会社1. 提案の質の向上: 発注者の真の課題や要望を正確に把握できるため、的外れな提案を避け、より具体的で質の高いソリューションを提示できる。2. 見積もりの精度向上: 曖昧な情報に基づく概算ではなく、明確な要件に基づいた正確な工数と費用を算出できる。

発注の壁を下げるRFPの重要性

Webサイト制作の発注を検討している読者(BOFU層)にとって、RFPは単なる形式的な書類ではありません。それは、「発注の壁」を下げるための最も有効なツールです。

RFPを作成する過程で、発注者は自社の**「課題」と「達成したい状態」**を言語化せざるを得なくなります。この言語化の作業こそが、発注者自身の不安を解消し、プロジェクトの成功確度を高める第一歩となります。RFPによって要件が明確になれば、制作会社とのコミュニケーションも円滑になり、発注に対する心理的なハードルは大きく下がります。

2. RFPに必ず入れるべき10項目

Webサイト制作のRFPに必須となる、プロジェクトの成功を左右する10の項目を解説します。これらの項目を網羅することで、制作会社は貴社にとって最適な提案を作成できます。

項目概要と記載すべき内容
1. プロジェクトの背景なぜ今、このプロジェクトを行うのか。現行サイトの課題、市場環境の変化、経営戦略上の位置づけなど、プロジェクトの必然性を記載します。
2. 課題と達成したい状態現状の課題(例:コンバージョン率が低い、情報が整理されていない)と、プロジェクト完了後に達成したい具体的な状態(例:ユーザーが迷わず情報にたどり着ける、ブランドイメージの向上)を明確にします。
3. サイトの目的(KGI/KPI)プロジェクトの成功を測るための具体的な指標(KGI:最終目標、KPI:中間指標)を設定します。例:「資料請求数を20%増加させる」「特定ページの滞在時間を30秒延長する」など。
4. 想定するターゲットサイトを利用するユーザー層(ペルソナ)を具体的に定義します。年齢、職業、ITリテラシー、サイト訪問の目的、抱える課題などを明確にすることで、デザインやコンテンツの方向性が定まります。
5. 必要なページ構成(サイトマップ)構築するWebサイトの全体像を、階層構造(サイトマップ)として提示します。既存コンテンツの棚卸しと、新規に必要なページを明確にします。
6. 機能要件サイトに実装すべき具体的な機能(例:予約システム、EC機能、会員ログイン、多言語対応、CMS連携)をリストアップします。
7. 非機能要件サイトの品質や性能に関する要件です。速度、セキュリティ、アクセシビリティなど、機能そのものではないが、サイトの信頼性や使いやすさに直結する重要な項目です。詳細は次章で詳述します。
8. 運用体制サイト公開後の更新頻度、コンテンツ作成の担当者、担当者のスキルレベル、技術的な保守を誰が行うかなど、運用に関する体制を記載します。この情報により、制作会社は適切なCMS(コンテンツ管理システム)やサポート体制を提案できます。Bowlinesでは、WordPressでのブログ記事投稿を支援するガイドも提供しています 2。
9. 予算感・希望納期プロジェクトにかけられる総予算の範囲と、希望する納期(マイルストーンを含む)を明記します。これにより、制作会社は予算内で実現可能な最適なスコープと技術選定を提案できます。
10. 選定基準提案を評価する際の基準(例:UI/UXの優位性、SEO対策の具体性、技術的な安定性、サポート体制、LLMOへの対応など)を明確にします。

3. 非機能要件:速度・アクセシビリティ・LLMO

非機能要件は、Webサイトの品質を担保し、ユーザー体験を決定づける重要な要素です。ここでは、現代のWebサイトに不可欠な3つの非機能要件について、公式出典に基づき解説します。

Web速度:Core Web Vitals

Webサイトの速度は、ユーザー体験だけでなく、Google検索のランキング要因としても重要視されています。Googleは、Webサイトの健全性を測る指標としてCore Web Vitals(コアウェブバイタル)を定めています [3]。

Core Web Vitalsは、以下の3つの指標で構成されています。

指標測定対象説明(公式情報より)目標値
LCPロード性能Largest Contentful Paint(最大コンテンツの描画)。ページの主要なコンテンツが読み込まれ、画面に描画されるまでの時間 [3]。2.5秒以内
INP応答性Interaction To Next Paint(次回の描画までのインタラクション)。ユーザーがページとやり取り(クリックなど)を開始してから、視覚的なフィードバックが画面に表示されるまでの遅延 [3]。200ミリ秒以内
CLS視覚的な安定性Cumulative Layout Shift(累積レイアウト変更)。ページが読み込まれる際に、予期せずレイアウトがずれる現象の合計スコア [3]。0.1未満

出典: Google Search Central Documentation [3]

RFPでは、「Core Web Vitalsの全指標でGoodを達成すること」を要件として明記することが、高品質なWebサイト構築の必須条件となります。

アクセシビリティ

アクセシビリティとは、高齢者や障害者を含む誰もが、Webサイト上の情報にアクセスし、利用できる度合いを指します。これは、現代社会におけるWebサイトの社会的責任であり、法令遵守の観点からも重要性が高まっています。

アクセシビリティの国際的な標準は、W3C(World Wide Web Consortium)が定めるWCAGです。

出典: Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2 [4]

WCAG 2.2は、ウェブコンテンツをよりアクセシブルにするための広範囲にわたる推奨事項を網羅しており、日本の国家規格であるJIS X 8341-3:2016(高齢者・障害者等配慮設計指針)も、このWCAG 2.0と整合性が取られています [5]。

RFPでは、「WCAG 2.2のレベルAAに準拠すること」といった具体的な目標を設定することで、制作会社に専門的な対応を求めることができます。Bowlinesでは、アクセシビリティに関する詳細な記事も公開しています [6]。

出典: JIS X 8341-3:2016 解説(ウェブアクセシビリティ基盤委員会) [5]

LLMO(AI検索最適化)

LLMO(Large Language Model Optimization:AI検索最適化)とは、AI検索エンジンや大規模言語モデル(LLM)がWebコンテンツを正確に理解し、検索結果やAIの回答に活用しやすいように最適化する手法です。

LLMの定義

LLMとは、Large Language Modelの略であり、OpenAIのGPT-4の技術レポートでは、「画像とテキストの入力を受け付け、テキストの出力を生成できる、大規模なマルチモーダルモデル」と定義されています [7]。これは、膨大なデータで学習し、人間のような自然言語を理解・生成するAIモデルです。

出典: OpenAI GPT-4 Technical Report [7]

AI検索時代の「構造化データ × コンテンツの文脈性」

AI検索時代において、WebサイトがLLMに正確に情報を読み取らせるためには、以下の2点が重要になります。

1.構造化データ(Schema.org)の活用: Googleは、Webページの内容を検索エンジンに正確に伝えるためのデータ形式として、構造化データのマークアップを推奨しています [8]。これは、コンテンツの意味や関係性を機械が理解しやすいように記述するもので、リッチリザルトの表示に不可欠です。Googleは、構造化データがLLMに直接的な利点をもたらすとは明言していませんが、クリーンなHTMLと構造化データは、AIを含む検索エンジンがコンテンツを理解するための基盤となります [9]。

2.コンテンツの文脈性(高品質なコンテンツ): LLMは、コンテンツの文脈を深く理解して回答を生成します。そのため、単にキーワードを詰め込むのではなく、ユーザーの意図を深く満たす、網羅的で信頼性の高いコンテンツ(文脈性)が不可欠です。

RFPでは、「構造化データ(Schema.org)による主要コンテンツのマークアップ」や「LLMOを意識したコンテンツ設計」を要件に加えることで、AI検索時代に対応できるWebサイト構築を目指すべきです。LLMOに関する詳細な情報は、Bowlinesの専門記事でも解説しています [10]。

出典: Google Search Central General Structured Data Guidelines [8]

4. RFPテンプレートのサンプル

ここでは、架空の企業「株式会社未来テック」を例に、RFPの主要項目における具体的な記述例を示します。

RFPサンプル:株式会社未来テック(架空)

プロジェクト名: 企業向けSaaS製品「Future-SaaS」ブランドサイトリニューアル

1. プロジェクトの背景 現行のブランドサイトはデザインが古く、スマートフォンでの視認性が低い。また、製品情報が分散しており、ユーザーが求める情報にたどり着きにくい構造となっている。競合他社が次々とWebサイトを刷新する中、ブランドイメージの陳腐化が懸念される。

2. 課題と達成したい状態

•課題: サイト訪問者の直帰率が高く(現状65%)、資料請求フォームへの到達率が低い。

•達成したい状態: ユーザーが製品の価値を直感的に理解でき、信頼感のあるブランドイメージを確立する。情報導線を最適化し、迷わず資料請求や問い合わせができる状態にする。

3. サイトの目的(KGI/KPI)

•KGI: サイト経由の資料請求数を現状比で20%増加させる。

•KPI: 主要な製品紹介ページの滞在時間を現状比で30秒延長させる。

4. 想定するターゲット

•メインターゲット: 中小企業のIT部門の意思決定者(40代〜50代)。SaaS導入の検討経験があり、費用対効果を重視する。

•サブターゲット: 経営層。製品の信頼性や導入実績を重視する。

5. 必要なページ構成(サイトマップ) トップページ、製品概要、機能詳細、導入事例(カテゴリ別)、料金プラン、会社概要、ニュース、資料請求フォーム、プライバシーポリシーなど、約30ページを想定。

6. 機能要件

•CMSとしてWordPressの採用を必須とする。

•資料請求フォームは、既存のMAツール(Marketo)との連携を必須とする。

•導入事例ページには、業種や課題で絞り込める検索・フィルタリング機能を実装する。

7. 非機能要件

•Web速度:Google Core Web Vitalsの全指標(LCP, INP, CLS)で「Good」を達成すること。

•アクセシビリティ:W3C WCAG 2.2のレベルAAに準拠すること。

•セキュリティ:常時SSL化(HTTPS)を必須とし、WAF(Web Application Firewall)の導入を提案に含めること。

8. 運用体制

•更新頻度:週に1〜2回のブログ記事更新、月に1回の導入事例追加を想定。

•担当者スキル:HTML/CSSの知識は限定的であり、CMSの操作は直感的に行えることを希望する。

9. 予算感・希望納期

•予算感: 500万円〜800万円(税別、保守費用を除く)。

•希望納期: 提案採択後、6ヶ月以内の公開を希望する。

10. 選定基準

•UI/UXデザインの提案力(特にターゲット層への訴求力)。

•アクセシビリティ対応に関する実績と知見。

•LLMOを意識した構造化データの実装とコンテンツ設計に関する提案。

•公開後の技術サポート体制と保守費用。

5. CTA:RFPひな形(Googleドキュメント版)のダウンロード

Webサイト制作の発注は、貴社の未来を左右する重要な投資です。RFPを作成することで、発注前の不安は大きく解消され、プロジェクトの成功確度は飛躍的に高まります。

本記事で解説した必須項目を、このままコピーして自社用に使えるRFPひな形(Googleドキュメント版)としてご用意しました。

このひな形を使えば、貴社が本当に必要な要件を漏れなく、かつ正確に制作会社に伝えることができます。発注の壁を乗り越え、最適なパートナーと出会うための第一歩を踏み出しましょう。

[【無料ダウンロード】このままコピーして自社用に使えるRFPひな形(Googleドキュメント版)]

出典(一次情報リンク必須)

[1] 経済産業省. “情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会 報告書、モデル取引・契約書等”.

[2] Bowlines. “WordPressでのブログ記事投稿:はじめてでも失敗しない”.

[3] W3C. “Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2

[4] ウェブアクセシビリティ基盤委員会 (WAIC). “JIS X 8341-3:2016 解説”.

[5] Bowlines. “WordPressサイトで実現するウェブアクセシビリティ:誰”.”

[6] OpenAI. “GPT-4 Technical Report

[7] Google Search Central. “General Structured Data Guidelines”

[8] Google Search Central. “Intro to How Structured Data Markup Works”

[9]Bowlines. “LLMOとは?AI検索時代、あなたのサイトは対応できて

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