30/60/90秒の短尺動画をAIで:台本→絵コンテ→生成→字幕

短尺動画制作の工程(台本・絵コンテ・生成・字幕・配信)を抽象的なノードとラインで表したデジタルイメージ

Contents

なぜ短尺動画は「作れても続かない」のか

属人化によるばらつき(左の乱れ)と、台本テンプレによる標準化(右の整列)を対比した抽象図

多くの企業が短尺動画の活用に着手する一方で、「制作が属人化して続かない」「外注コストがかさむ」といった課題に直面しています。特に中小企業においては、限られたリソースの中で継続的な動画制作・配信体制を構築することは容易ではありません。この問題の根源は、制作プロセスそのものにあります。

•属人化: 特定の担当者のスキルやセンスに依存することで、その担当者が不在の場合に制作が滞る、クオリティが安定しないといった問題が生じます。これは、動画制作が「個人のクリエイティビティ」に依存したアートワークとして捉えられている場合に起こりがちです。

•台本がないまま撮影して破綻する理由: 計画不在のまま撮影を開始すると、メッセージが不明瞭になったり、意図した構成から逸脱したりします。結果として、編集段階で大幅な手戻りが発生し、時間とコストを浪費します。特に、複数人での分業やAIの活用を前提とする場合、設計図である台本は不可欠です。

•尺ごとの目的不在: 30秒、60秒、90秒という尺の違いは、単なる長さの問題ではありません。それぞれの尺に適した情報量、メッセージ、そして視聴者に期待する行動が異なります。例えば、認知獲得目的の30秒動画と、比較検討段階の顧客(MOFU層)に向けた90秒の解説動画では、構成も表現も全く異なるべきです。この目的設定が曖昧なままでは、効果的な動画は作れません。

短尺動画をAIで回す全体フロー

生成AIを動画制作のプロセスに組み込むことで、属人化を防ぎ、効率的な運用フローを構築することが可能になります。重要なのは、AIに全てを任せる「完全自動化」を目指すのではなく、人間が設計と承認を行い、AIが生成と整理を補助する「半自動+承認」の体制を構築することです。

以下に、その全体フローを示します。

フェーズ役割主な作業AIの活用ポイント
1. 台本人間(設計)目的、ターゲット、尺、構成要素を定義したテンプレートを作成構成案の壁打ち、表現の多角化
2. 絵コンテ人間+AI台本に基づき、各シーンのビジュアルと動きを具体化テキストからの画像生成、シーン構成案の提示
3. 生成AI+人間絵コンテを基に動画素材を生成動画クリップの生成、BGMの選定
4. 字幕AI+人間生成された動画に字幕を付与音声認識による自動字幕生成、タイミング調整
5. 配信人間(運用)完成した動画を各プラットフォームへ配信、効果測定

このフローの核心は、AIを「判断の代替」ではなく「整理・生成・補助」のエンジンとして位置づける点にあります。人間が戦略的な意思決定とクリエイティブな判断の最終責任を持つことで、品質を担保しつつ、制作の効率を最大化します。

台本テンプレを先に作る

動画制作の成否は、撮影や編集の前段階、すなわち「台本」で8割が決まると言っても過言ではありません。特に、AIを活用した半自動化フローにおいては、台本がAIへの明確な指示書としての役割を果たします。

なぜ台本が8割を決めるのか

台本は、動画の目的、メッセージ、構成、そして最終的なゴールを定義する設計図です。優れた台本は、以下の役割を果たします。

•目的の明確化: 誰に、何を伝え、どう行動してほしいのかを言語化する。

•構成の安定化: メッセージの論理的な流れを担保し、破綻を防ぐ。

•分業の効率化: 撮影、編集、AIによる生成といった各工程の担当者が、共通認識を持って作業を進めるための基盤となる。

•AIへの指示精度向上: AIに対して、どのようなテキスト、画像、動画を生成すべきかを具体的に指示できる。

30秒/60秒/90秒で変わる設計思想

尺の長さは、伝えられる情報量と視聴者の集中力に直結します。したがって、尺ごとに設計思想を変える必要があります。

主な目的設計のポイント
30秒認知獲得、興味喚起冒頭3秒で惹きつける、メッセージは1つに絞る、視覚的なインパクト重視
60秒理解促進、関心醸成課題提起→解決策提示の構成、簡易なデモや顧客の声、LP×広告との連携
90秒比較検討、意思決定支援詳細な機能説明、導入事例、専門家による解説、ECのはじめ方などの具体的なノウハウ提供

台本テンプレに含める最低限の要素

汎用性の高い台本テンプレートを事前に作成しておくことで、制作の都度ゼロから考える手間を省き、品質を平準化できます。テンプレートには、以下の要素を最低限含めるべきです。

•動画の目的: (例:製品AのLPへの送客、ECサイトでの購入促進)

•ターゲット: (例:中小企業のマーケティング担当者)

•尺: (30秒/60秒/90秒)

•シーンNo.: シーンごとの通し番号

•映像(V): 各シーンで表示する映像の内容(具体的な被写体、アクション、テロップ)

•音声(A): ナレーション、BGM、効果音の指示

•秒数: 各シーンの想定時間

Bロールと絵コンテの考え方

短尺動画を複数のシーンカードに分解し、順序と接続を示した抽象的な絵コンテイメージ

台本が固まったら、次は絵コンテで映像の解像度を上げていきます。AIを活用する場合、従来のように手書きで絵を描く必要はありません。テキストベースで、AIが理解しやすいようにシーンを設計することが重要です。

Bロールを“撮る”のではなく“設計する”

Bロール(メインの映像にインサートされる補足的な映像)は、視聴者の理解を助け、動画のリズムを整える重要な要素です。従来は「撮影現場で使えそうな素材を撮っておく」という発想になりがちでしたが、AI時代においては「台本に基づき、必要なBロールをテキストで設計する」という考え方にシフトします。例えば、「ユーザーが製品を使っている笑顔のシーン」といった抽象的な指示ではなく、「20代女性、オフィスでノートPCを操作しながら微笑んでいる、背景は明るくモダンな雰囲気」のように、具体的かつ構造的に記述します。

AIに任せやすい絵コンテの粒度

AIに動画生成を指示する場合、絵コンテの粒度が結果を大きく左右します。AIは文脈を深く理解するわけではないため、1つの指示(プロンプト)に複数の要素を詰め込みすぎると、意図しない結果が返ってくることがあります。シーンを細かく分解し、「被写体」「背景」「アクション」「カメラワーク」といった要素に分けてテキストで記述することが、AIに任せやすい絵コンテのコツです。

人が決める部分/AIに任せる部分の線引き

効率と品質を両立させるためには、人間とAIの役割分担が鍵となります。

•人が決めるべき部分:

•動画全体の目的とメッセージ

•ストーリーの核心となるキービジュアルのコンセプト

•ブランドイメージに関わるトンマナ(色調、フォントなど)

•法規制やコンプライアンスに関わる表現の最終判断

•AIに任せやすい部分:

•設計されたBロール素材の生成

•背景映像や抽象的なイメージカットの生成

•複数のデザインパターンの提案

•単純な編集作業(カット、繋ぎなど)

字幕と尺の設計

スマートフォンでの視聴が主流の現代において、音声なしで視聴されるケースも少なくありません。そのため、字幕は単なる装飾ではなく、情報を正確に伝達するための重要な要素となります。

字幕は装飾ではなく情報伝達

字幕の役割は、ナレーションの内容を補完し、視覚的に情報を伝えることです。特に、専門用語やデータを示す際には、字幕があることで理解度が格段に向上します。デザインにおいては、可読性を最優先し、背景とのコントラストが十分に確保されたフォントサイズと色を選択することが重要です。派手なアニメーションや装飾は、かえって情報の伝達を阻害する可能性があるため、慎重に検討すべきです。

尺ごとに変える字幕密度

30秒・60秒・90秒の尺の違いによる字幕情報密度の変化を、3つのパネルの線密度で示した抽象図

動画の尺に応じて、表示する字幕の情報量(密度)を調整する必要があります。

•30秒動画: 視聴者の離脱を防ぐため、キーワード中心の短いフレーズでテンポよく見せる。

•60秒動画: 要点をまとめた短い文章で、ナレーションの内容を補足する。

•90秒動画: 詳細な説明やデータを正確に伝えるため、情報量を増やし、必要に応じて表示時間を長めにとる。

AI字幕生成で必ず人が確認すべき点

AIによる自動字幕生成は非常に便利な機能ですが、100%正確ではありません。特に、専門用語、固有名詞、同音異義語などは誤認識が発生しやすいため、必ず人間による確認と修正が必要です。誤った情報が発信されることは、企業の信頼を損なうリスクに直結します。AIはあくまで下書きを作成するアシスタントであり、最終的な品質保証は人間が担うべきです。

配信導線を前提に動画を作る

短尺動画は、単体で完結するコンテンツとしてではなく、Webサイト全体のマーケティングファネルの中で、特定の役割を果たすものとして設計されるべきです。特にMOFU層(検討段階)の読者に対しては、動画視聴後の「次の一手」を明確に提示することが重要になります。

LP・広告・ECで役割が変わる

動画を配信するプラットフォームや、それが配置される場所によって、動画に期待される役割は大きく異なります。

•LP(ランディングページ): 製品やサービスの理解を深め、興味を喚起し、問い合わせや資料請求といったコンバージョンへ誘導する補助的な役割。動画はLPのメッセージを補強し、離脱率の低下に貢献します。

•広告: ターゲット層の注意を引き、クリックを促し、LPや製品ページへの流入を最大化する役割。短時間で強いインパクトを与え、次のアクションへ繋げる設計が求められます。

•EC(Eコマース): 製品の機能や使い方を具体的に示し、購入への不安を解消し、購買意欲を高める役割。製品の魅力を多角的に伝え、顧客の疑問を先回りして解決することが重要です。

MOFU動画に必要な「次の一手」

MOFU層の顧客は、すでに製品やサービスに一定の関心を持っています。そのため、動画の目的は、単なる情報提供に留まらず、具体的な次の行動へとスムーズに誘導することにあります。動画の最後には、明確なCTA(Call To Action)を設けるべきです。

•詳細ページへの誘導: 製品の機能や導入事例をさらに深く知りたい顧客のために、関連するLPや製品詳細ページへのリンクを提示します。

•資料ダウンロード: 比較検討に必要な情報(ホワイトペーパー、導入事例集など)をダウンロードできるページへ誘導します。

•無料トライアル/デモ申し込み: 実際に製品を体験したい顧客のために、申し込みフォームへのリンクを提示します。

•問い合わせ: 個別の相談を希望する顧客のために、問い合わせフォームや電話番号を明示します。

動画単体で完結させない設計

動画はあくまでマーケティングファネルの一部であり、その効果を最大化するためには、他のコンテンツや導線との連携が不可欠です。例えば、広告からLPへ、LPからECサイトへといった一連の流れの中で、動画がどの段階で、どのような役割を果たすのかを明確に設計する必要があります。動画の視聴完了後に、関連するコンテンツや次のアクションへの導線をスムーズに提供することで、顧客体験を向上させ、コンバージョン率を高めることができます。

よくある失敗パターン

AIを活用した短尺動画制作においても、いくつかの典型的な失敗パターンが存在します。これらを事前に理解し、回避することで、効率的かつ効果的な運用が可能になります。

•いきなり動画を生成する: 台本や絵コンテといった設計図なしに、いきなりAIに動画生成を指示すると、意図しない内容の動画が生成されたり、メッセージが不明瞭になったりします。結果として、大幅な修正が必要となり、かえって時間とコストがかかります。AIはあくまで指示された内容を生成するツールであり、戦略的な思考やクリエイティブな設計は人間が担うべきです。

•尺だけ決めて目的がない: 「30秒の動画を作る」という尺の指定だけでは、動画の方向性は定まりません。その30秒で「誰に」「何を伝え」「どう行動してほしいのか」という目的が明確でなければ、効果的な動画は生まれません。尺は目的を達成するための手段であり、目的そのものではないことを理解する必要があります。

•AIに丸投げして修正不能になる: AIが生成した動画をそのまま公開してしまうと、誤った情報やブランドイメージにそぐわない表現が含まれている可能性があります。特に、AIの学習データに偏りがある場合、意図しないバイアスがかかった表現が生成されることもあります。AIはあくまで補助ツールであり、最終的な品質チェックと承認は人間が行うべきです。修正が困難な形式で生成される前に、段階的に人間が介入し、確認するフローを組み込むことが重要です。

まとめ

短尺動画の制作と運用において、生成AIは強力なツールとなり得ますが、その活用には明確な設計思想と運用フローが不可欠です。AIは「制作」のプロセスを効率化する「補助エンジン」であり、戦略的な「業務フロー」を構築するのは人間の役割です。

•短尺動画は「制作」ではなく「業務フロー」: 個人のスキルに依存するアートワークではなく、再現性のある業務プロセスとして捉えることで、継続的な運用が可能になります。

•AIは生成役ではなく整理・補助役: AIに全てを任せるのではなく、人間が戦略を立て、AIがその指示に基づいて生成・整理を補助するという役割分担が重要です。

•台本テンプレと運用設計が最重要: 事前に作成された台本テンプレートと、人間とAIの役割を明確にした運用設計が、効率的かつ効果的な短尺動画制作の鍵となります。

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