このシリーズでは、AIを使って一つの仕事を受け取り、確認し、調べ、まとめ、提出するまでの流れを順番に扱います。
第1話で行うのは、仕事を始めることではありません。まず、受け取った依頼を「作業できる形」に置き換えます。
実務では、依頼はいつもきれいな文章で届くとは限りません。メールの長い文面、口頭で言われた一言、会議中のメモ、過去資料への参照が混ざっていることがあります。そのまま手を動かすと、あとから「そういう意味ではなかった」「そこまでは頼んでいない」というズレが起きやすくなります。
AIは、この最初の整理に向いています。ただし、AIに結論を作らせるのではなく、依頼の中身を分けて見えるようにする使い方が大切です。
依頼をそのまま作業にしない

依頼を受けた直後は、まず作業を止めます。
たとえば、次のような依頼が届いたとします。
来週の打ち合わせで使う簡単な資料を作っておいてください。前回の内容をもとに、先方に説明しやすい形でお願いします。
この文章だけを見て、すぐ資料を作り始めると危険です。
「簡単な資料」が一枚なのか、数ページなのか。前回の内容とはどの資料なのか。先方に説明する人は自分なのか、上司なのか。打ち合わせ前に社内確認が必要なのか。ここが曖昧なまま進むと、作業の方向がずれます。
第1話では、依頼文を完成物へ直行させず、まず受付メモへ変換します。
受付メモに分ける

AIに渡す前に、依頼内容をきれいに書き直す必要はありません。
メール本文、チャットの一部、口頭で聞いた内容、関連資料名などを、そのまま材料として集めます。そのうえで、AIには次のように頼みます。
次の依頼内容を、作業を始める前の受付メモに整理してください。推測で補わず、書かれていることと不明なことを分けてください。
受付メモでは、次の項目に分けます。
- 依頼されたこと
- 作るもの
- 使う相手
- 期限や日程
- 参考にする資料
- 依頼文だけでは分からないこと
ここで大切なのは、まだ文章を整えすぎないことです。見た目のよい報告文にするよりも、何が分かっていて、何が曖昧かを見えるようにします。
使う相手を決める

同じ依頼でも、誰に見せるために整理するかで形が変わります。
社内で共有するなら、次に誰が何をするかが分かる短いメモが向いています。お客様へ返すなら、こちらの理解と確認したい点が伝わる文章が必要です。上司に判断してもらうなら、判断材料と不明点を短く並べる方が使いやすくなります。
AIには、先に用途を伝えます。
この整理結果は、社内で作業担当者に共有するために使います。
または、
この整理結果は、依頼者へ確認事項を返すために使います。
用途を決めると、AIの整理結果が「誰にとって使いやすい形か」に近づきます。
決まっていることだけを残す
AIの整理結果を見ると、自然な言い回しで不足部分を補ってくれることがあります。
しかし、第1話では補完を急ぎません。依頼文にない情報は、不明として残します。
確認したいのは、次のような点です。
- 元の依頼に書かれていること
- 口頭で聞いたが記録が薄いこと
- 参考資料を見れば分かりそうなこと
- 依頼者に聞かないと決められないこと
AIには、次の一文を入れておくと扱いやすくなります。
元の依頼にない内容は、断定せず「不明」としてください。
この指定をしておくと、AIのもっともらしい補完を防ぎやすくなります。
最初の一手を決める
受付メモができたら、次にやることを一つだけ決めます。
いきなり資料作成に入るのではなく、まずは次のどれかになります。
- 参考資料を探す
- 依頼者へ確認する
- 社内の担当者に聞く
- 期限だけ先に確認する
- 作成物の形式を決める
ここまで整理できれば、第1話の目的は達成です。
この時点では、まだ仕事は完成していません。むしろ「作業に入る前の地図」を作った段階です。
実践:最近受けた依頼を一つ選ぶ

まず、最近受けた依頼を一つ選びます。
長いメールでなくても構いません。チャット、口頭メモ、会議中の一言でも十分です。個人情報や社外秘情報は削除し、内容が分かる範囲だけ残します。
AIには、次のように依頼します。
次の依頼を、作業開始前の受付メモにしてください。依頼されたこと、作るもの、使う相手、期限、参考資料、不明なこと、最初に確認することに分けてください。元の情報にない内容は推測せず、不明と書いてください。
出てきた整理結果を見て、自分の仕事に合わせて項目名を直します。
次回の第2話では、この受付メモを使って「今すぐ作業を始めてよいか」「先に確認するべきことがあるか」を判断します。
まとめ
仕事の依頼内容をAIで整理する目的は、AIに作業を丸投げすることではありません。
最初に行うべきことは、依頼を受付メモに変え、作るもの、使う相手、期限、参考資料、不明点を分けることです。
第1話で作るのは、完成物ではなく作業前の地図です。この地図があると、第2話で不足情報を見つけやすくなり、確認不足のまま作業を進める失敗を減らせます。

