事例ページ“ひな形化”実践:1件を30分で型に落とす

事例ページ“ひな形化”実践

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事例ページは、BtoBビジネスにおいて最も強力な営業ツールの一つです。しかし、「事例が大事なのは分かっているが、作るのが面倒」「毎回、構成を考えるのに時間がかかる」と感じていませんか。多くの企業で、事例作成は担当者のスキルや気分に左右される属人化した作業になりがちです。毎回ゼロから「どのような構成にするか」「どの情報を入れるか」を考えていると、1件あたり数時間、場合によっては数日を費やしてしまいます。これでは、事例を量産することは不可能です。

本記事では、事例作成を「誰でも再現できる型」に落とし込み、1件あたり30分程度で完成させるための実践的なノウハウを解説します。事例の質を落とさずに、効率的にストックを増やしていきましょう。

構成ブロックを固定する

事例ページを構成するブロック(要素)を完全に固定

事例作成の長時間化の最大の原因は、「何を書くか」を毎回考えてしまうことです。この問題を解決するには、事例ページを構成するブロック(要素)を完全に固定し、そのブロックを埋める作業に集中することです。

事例ページで最低限必要なブロック

読者が知りたいのは、「自分と同じような課題を抱えた企業が、どのように解決したか」というストーリーです。このストーリーを過不足なく伝えるために、以下の5つのブロックを必須とします。

ブロック名記載すべき内容(目的)記載のポイント
課題導入前の具体的な悩み、解決したい問題点、当時の状況読者が「うちと同じだ」と感じる具体的な状況を記述する
施策内容どのようなサービス・製品を、どのように導入したか導入した「手段」と「範囲」を明確にする
実施プロセス導入決定から実行までの具体的な手順、乗り越えた障壁読者が導入の「現実的なイメージ」を持てるようにする
成果・変化導入後に得られた具体的な結果、社内の変化数値だけでなく、定性的な変化(意識、行動)も記述する
担当者コメント(任意)導入企業の担当者からの率直な感想や今後の展望信頼性を高めるための「生の声」として活用する

ブロックを固定するメリット

構成ブロックを固定することで、作成者と読者の双方にメリットが生まれます。

対象メリット効果
作成者書く内容に迷わなくなる思考の時間がゼロになり、作業時間の大幅短縮につながる
作成者情報の抜け漏れを防げる必須ブロックがチェックリストとなり、品質が均一化する
読者読者が比較しやすくなるどの事例を見ても同じ構成のため、自社との比較検討が容易になる

証拠素材の作り方

事例の説得力を高めるには、事実ベースの証拠素材が不可欠です。しかし、素材集めや加工に時間をかけては本末転倒です。

数値がない場合の扱い方

BtoBの事例では、必ずしも「売上〇〇%アップ」のような定量的な成果が出るとは限りません。無理に数値化しようとすると、かえって信憑性を損ないます。

実務的な対応策:

1.無理に数値化しない:数値がない場合は、「変化・判断・行動の事実」を整理することに集中します。

2.定性的な変化を記述する:

•変化:「以前は週に3時間かかっていた作業が、1時間に短縮された」

•判断:「導入前は競合他社と比較検討していたが、〇〇という点で当社サービスを選んだ」

•行動:「導入後、営業担当者が顧客に提案する資料の作成時間が半分になり、商談数が増えた」

スクリーンショット・資料の考え方

視覚的な証拠は重要ですが、加工に時間をかけるべきではありません。

項目実務で再現可能な手順加工しすぎない理由
取得タイミングヒアリング時、または事例公開の承諾を得た直後に、「ありのままの状態」で取得する。後から取得しようとすると、システムの状態が変わったり、担当者の手間が増えたりする。
加工の範囲機密情報(顧客名、個人情報、具体的な金額など)のマスキングのみに留める。過度なデザイン加工は、かえって「作られた感」を出し、信頼性を損なうため。
資料の扱い導入時に使用した資料や、成果を示すグラフなどは、そのままの形でトリミングして使用する。資料の再作成は工数がかかるため、情報整理の目的以外では避ける。

ビフォーアフターの整理方法

「ビフォーアフター」は、読者が最も注目する部分です。抽象的な表現ではなく、事実に基づいた整理が求められます。

事例ページにおける「ビフォーアフター」は、読者が最も注目する部分です。抽象的な表現ではなく、事実に基づいた整理が求められます。

やってはいけないビフォーアフター

事例作成の効率を下げ、読者の信頼を失う原因となる表現です。

避けるべき表現なぜ避けるべきか
抽象的な表現だけで終わる「業務が効率化された」「顧客満足度が向上した」など、具体的なイメージが湧かない。
因果関係が不明な書き方「サービス導入後、たまたま市場が伸びたため売上が上がった」など、自社サービスとの関連性が薄い。
感情論に終始する「担当者のモチベーションが上がった」など、客観的な証拠に乏しい。

事実ベースで整理するコツ

「状態の違い」と「判断・対応の変化」という、客観的な事実に着目して整理します。

整理のコツ具体的な記述例
「状態の違い」に着目するBefore:「情報が部署ごとに散在し、資料作成に平均2時間かかっていた」 After:「全社で情報が統合され、資料作成時間は平均30分に短縮された」
判断・対応の変化を書くBefore:「競合他社に価格で負けることが多かった」 After:「提案資料に事例を組み込めるようになり、価格競争から脱却し、成約率が10%向上した」

この整理は、ヒアリング時に「導入前と導入後で、御社の〇〇(特定の業務)はどう変わりましたか?」と質問することで、事実ベースの回答を引き出しやすくなります。

FAQを事例ページに組み込む

FAQを組み込むことで、コンバージョン率を高める

事例ページを読んだ見込み客は、次のアクション(問い合わせ)を起こす前に、必ずいくつかの疑問や不安を抱えます。FAQを組み込むことで、これらの不安を先回りして解消し、コンバージョン率を高めます。

FAQを入れる目的

目的効果
読者の不安を先回りして解消する問い合わせを躊躇する要因(費用、期間、手間など)を事前にクリアにする。
問い合わせ前の判断材料を増やす読者が「このサービスは自分たちに合っているか」を自己判断できる情報を提供する。
営業担当者の負担を軽減する毎回聞かれる定型的な質問への回答をWeb上で完結させる。

事例向きFAQの例

事例ページに特化して、読者の「もし自分たちが導入したら?」という疑問に答えるFAQを設定します。

質問例回答の方向性
期間はどのくらいかかったか導入決定から成果が出るまでの現実的な期間を提示する(例:導入準備に1ヶ月、本格運用開始から3ヶ月で成果が出始めました)。
社内の作業負担はどの程度か導入時の初期設定や、日々の運用で発生する具体的な作業量や担当者の人数を明記する。
同じ条件で再現できるか「この事例は特殊なケースではない」ことを示すため、再現性を担保する条件や、一般的な導入企業の属性を提示する。
費用対効果はどのように判断したか導入費用と、削減できたコストや獲得できた利益の具体的な内訳を、可能な範囲で記述する。

事例作成を加速させる実務ツール

事例ページを「1件30分」で型に落とし込むための鍵は、ヒアリングの段階で必要な情報を過不足なく、かつ固定された構成に合わせて収集することです。

そのための実務ツールとして、「事例ヒアリング質問票」の活用を推奨します。これは、上記で固定した構成ブロック(課題、施策内容、プロセス、成果・変化)を埋めるために必要な質問をリスト化したものです。

この質問票を事前に用意し、ヒアリング時に使用することで、情報収集の漏れを防ぎ、インタビュー後の原稿作成作業を「質問票の回答を、そのまま記事の構成ブロックに流し込む作業」へと変えることができます。

質問票は、特定のツールやシステムではなく、情報整理に使えるシンプルな質問リストとして設計し、作成フローに組み込むことで、事例作成の属人化を防ぎ、誰でも再現可能な「型」を確立します。

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